自動車教習所は、道路交通法のうえで「届出自動車教習所」と「指定自動車教習所」という二つの位置づけに分けて扱われます。両者の最も大きな違いは、教習を終えたときに運転免許試験の技能試験が免除されるかどうかという点にあります。ここでは条文にもとづいて、それぞれの制度上の意味と、免許を取得するまでの手順がどのように変わるのかを整理します。
届出自動車教習所とは、公安委員会へ届け出た教習所のこと
道路交通法第九十八条第二項は、自動車教習所を設置し、又は管理する者が、内閣府令で定めるところにより、その教習所の所在地を管轄する公安委員会へ、氏名または名称および住所、教習所の名称および所在地などの事項を届け出ることができると定めています。この届出を行った教習所が、一般に届出自動車教習所と呼ばれます。
注意したいのは、条文が「届け出ることができる」という書き方をしている点です。この届出は義務ではなく、教習所の側が任意で行う手続として制度化されています。
また同条第一項は、自動車教習所を設置し、又は管理する者に対して、その教習所で行う自動車の運転に関する教習の水準の維持向上に努めなければならないと定めています。届出の有無にかかわらず、教習の質を保つ努力義務が課されているということです。
さらに同条第三項により、公安委員会は届出をした教習所に対して、自動車の運転に関する教習の適正な水準を確保するため、その教習の態様に応じて必要な指導又は助言をするものとされています。届出をした教習所は、公安委員会による指導・助言の対象になります。
届出をした教習所に対する公安委員会の関わり
届出は、名簿に名前を載せるだけの手続ではありません。道路交通法第九十八条第四項は、公安委員会が第三項の指導又は助言をした場合において、必要があると認めるときは、自動車安全運転センターに対し、その指導又は助言に係る自動車教習所において自動車の運転に関する技能又は知識の教習を行う職員に対する研修その他その職員の資質の向上を図るための措置について、必要な配慮を加えるよう求めることができると定めています。
また同条第五項により、公安委員会は、内閣府令で定めるところにより、第三項の指導又は助言をするため必要な限度において、届出をした自動車教習所を設置し、又は管理する者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができるとされています。
つまり届出をした教習所は、公安委員会からの指導や助言を受け、必要に応じて報告や資料の提出を求められる立場に置かれます。教習の水準を保つための関わりが、条文のうえで用意されているということです。
指定自動車教習所は、届出をした教習所の中から指定される
道路交通法第九十九条第一項は、公安委員会が、第九十八条第二項の届出をした自動車教習所のうち、政令で定める一定の種類の免許を受けようとする者に対して教習を行うものであって、職員や設備などに関する基準に適合するものを、その教習所を設置し、又は管理する者の申請にもとづいて、指定自動車教習所として指定することができると定めています。
ここで見落とされやすいのは、この二つが対立する区分ではないという点です。条文の構造上、指定自動車教習所は届出をした自動車教習所の中から指定されます。届出は、指定の前提となる手続にあたります。
同項が挙げる基準は五つあります。政令で定める要件を備えた管理者が置かれていること、技能検定員資格者証の交付を受けた職員が置かれていること、教習指導員資格者証の交付を受けた職員が置かれていること、教習および技能検定のための設備が政令で定める基準に適合していること、そして教習所の運営が政令で定める基準に適合していることです。人と設備の両面について、政令で定める水準が求められる仕組みになっています。
なお同条第二項は、申請に係る自動車教習所が第百条の規定により指定を取り消され、その取消しの日から三年を経過しないものであるときは、公安委員会は指定をしてはならないと定めています。